愛情狂現
ハッとして顔を上げると、そこには変わらぬ笑顔を浮かべた長谷川君がいた。
「いや、俺の方こそゴメン。困らせた?」
「ううん……あの、ホントに……」
しどろもどろになっていると、突然視界が暗くなった。
気がつくと、長谷川君が私を抱きしめていた。
「ごめん。でも、今だけはこうさせて……」
「うん…」
本当はこの時に断るべきだったんだろう。
突き飛ばして逃げていれば……
だけど、私にはそうすることができなかった。
あまりにも外の世界が綺麗過ぎて、前が見えてなかったんだろう。
―――ただ、言い訳をするなら。
長谷川君の腕の中が暖かかったから……