愛情狂現
秋が怒っているのはわかる。
でも、理由がわからない。
「おいで」
甘い声で秋が囁く。
それだけで私の足は勝手に動いてしまう。
わざと少し距離をあけて傍に立ち、私から秋に歩み寄るのを待ってるんだ。
フラフラと夢遊病患者のような足取りで秋に近寄る。
そして糸が切れたかのように崩れ落ちた。
秋に支えてもらわないと立てない。
猛烈な吐き気が喉元まで押し寄せ、肺がキリキリと痛む。
秋は、知ってる。
私が今日誰に会って何をしていたのか。
知っていてそれを咎めてるんだ。
怖い。
優しい秋はもういない。