忘れない、温もりを
少し歩いて、小道を進み
あたしたちは
小さな喫茶店に辿り着いた。

壁面を葉に覆われたそこは、ずっとこの街に根付いているんだなと
実感させた。


店内は少し暗いけど、
モダンな家具を淡いオレンジの光が彩っていて

カウンターから響いた
低いマスターの声が心地よかった。



「素敵なとこ…」
声になって出たあたしの心。

店内を見回すあたしに
「ええとこやろ」
と彼は言った。


少しの散策を終え、
彼は何がおかしいのか
笑いをこらえるような仕草を見せ、
あたしを席に促した。

「何?なんかおかしい?」

「別にそんなんやないけど…おもろいなあ、自分」



あたしはアイスカフェラテ、彼はアイスコーヒーを注文すると

少しの沈黙と



外国に来たような
不思議な感覚があたしを包んだ。
< 30 / 45 >

この作品をシェア

pagetop