忘れない、温もりを
「まだ…こっちには居んねやろ?」

「うん、8月いっぱいは居るつもり…」

「…そか」


重い空気だった。


「…連絡してもええの?」

その言葉に彼を見上げると
仁も少し不安げな表情をしていた。


その顔が
すごく愛しく思えて
この腕いっぱいに
彼を

抱き締めたくなった。



あたしは何も言わず、
ただ

頷いた。




「そか!」
さっきまでの顔とは打って変わり、花が咲いたように

彼は笑った。


薄暗いそこでも

仁の表情ははっきり見えた。



と、彼が一歩
2人の距離を縮めた。


あたしより
頭2つ分くらい背の高い仁を見上げると


すごく

すごく優しい目をしてた。



そして両手で
それぞれ2つのあたしの手を取ると

「めっちゃ可愛い…責任とってや?」

そう言って笑った。



「責任ってなにッ……ンッ」

仁の唇が

あたしのに重なった。



夏の香りがした



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