忘れない、温もりを
程なくして
仁はようやく
あたしを解放してくれた。

あまりに激しくするから
途中
息の仕方さえも忘れてしまいそうになった。


「ばか…」
「まだ足りひん?」
仁の八重歯が覗いた。



……―――

しばらくして
あたしと仁は別れた。

「連絡するわ」
「ん…」

繋いだ指先をゆっくり離すと
風が通り抜けて
少しだけ

淋しかった。




電車に揺られ、
1駅手前で降りて

火照った顔を冷ますために
マンションまでの道を歩いた。


仁…




とても

とても不思議な人だった。



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