また君に…


「…覚えて…くれてたの?」
私の問いかけに、瀧汰は眉を下げた

「……そんなワケ…ないか…」


そうだよ。

瀧汰が覚えてるわけ無いじゃん…。


何、勘違いしちゃってんの私…。

冗談も…顔だけにしろ…だよね。


「……覚えてる」
「え…?」

今…

瀧汰が……言ったの?

「覚えてるよ…。美優」
「…っ!!……そんな…」

どんどん涙が溢れてくる。

この9年間…
貴方に名前を呼ばれたかった。

貴方の声が…聞きたかった。

「…コレ。
美優から…貰ったもの」
瀧汰は、胸に光る十字架のネックレスを握った

私の頬に冷たい何かが落ちた

瀧汰の……涙だ。

「…持ってて…くれたんだ」
私は瀧汰の頬に手を当てた
瀧汰はどんどん涙を流す

そして、瀧汰は優しく私を抱きしめた



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