真夏の白昼夢
「音川はあんまり驚かないんだな」
「石倉くんの判断に驚くよ。死んだ人間が目の前にいるのに冷静なんだから」
「音川の成仏しやすい方法を考えたら、ここで言うべきではないと思ってね」
「石倉くん…」
彼は私のことを考えてくれていた。心配かけてしまった。
「…私は成仏しちゃうの?」
「自然の摂理だよ」
そう言いながら、彼はにこりと笑った。
「花火をしようか」
彼の右手には私が昨日見た、花火があった。
「持てないんだよね。俺がやるから見ててよ」
石倉くんは、優しい。
ちなみに、花火はきれいだった。
今まで見てきた中で一番きれいだった。
「……音川」
涙が頬をつたって下に落ちた。地面は濡れなかった。
「……死にたくなかったよ」
「……」
「私…、やりたいこと、花火だけじゃ……ないよ……」