真夏の白昼夢

私でもなく、石倉くんでもない声が聞こえた。


「まって」


そこに女の子がいた。


私が助けようとした小学生だ。



「あなた…」

「お姉ちゃん、助けてくれてありがとう」

「でも…間に合わなかった」

「嬉しかったよ。わたしは死んじゃったけど、お姉ちゃんまで死ぬ必要はなかった。だから、次はわたしが助けてあげる」


「え?」






「お姉ちゃんは、まだ死んでない。ほとんど死にかけてるけど、病院で寝てるよ」


「……そう」




彼女の言葉を信じる要素は一つだけある。

石倉くんにきたメールは私が交通事故にあったということで、死んだとは言ってないということだ。




「花火しちゃダメ」

「…なんで?」


「最後の一本はお姉ちゃんがすべきだよ」


彼女は花火を一本つかむと私に差し出した。


「でも…」


持てないよ。


「はい」


彼女はそれでも渡してくる。
しかたなく手をのばすと花火は手に触れた。


驚いた。
< 19 / 22 >

この作品をシェア

pagetop