真夏の白昼夢
私でもなく、石倉くんでもない声が聞こえた。
「まって」
そこに女の子がいた。
私が助けようとした小学生だ。
「あなた…」
「お姉ちゃん、助けてくれてありがとう」
「でも…間に合わなかった」
「嬉しかったよ。わたしは死んじゃったけど、お姉ちゃんまで死ぬ必要はなかった。だから、次はわたしが助けてあげる」
「え?」
「お姉ちゃんは、まだ死んでない。ほとんど死にかけてるけど、病院で寝てるよ」
「……そう」
彼女の言葉を信じる要素は一つだけある。
石倉くんにきたメールは私が交通事故にあったということで、死んだとは言ってないということだ。
「花火しちゃダメ」
「…なんで?」
「最後の一本はお姉ちゃんがすべきだよ」
彼女は花火を一本つかむと私に差し出した。
「でも…」
持てないよ。
「はい」
彼女はそれでも渡してくる。
しかたなく手をのばすと花火は手に触れた。
驚いた。