真夏の白昼夢
なににも触れないので、することもなくただただ歩き回った。
疲れて、お店の売り物のベッドの上で寝てみた。
だれも注意をしにこない。
透明人間って気楽でいいかも。
「…おい、音川」
私の頭上で声が聞こえた。
「こんなところで寝てたら怒られるんじゃねぇの」
それはクラスメートの石倉くんだった。
「わ、私が見えるの…?」
「はぁ?」
電波発言をした私を冷たい目で見つめる石倉くん。寂しい。
「恥ずかしっ!路上で創作ダンス踊っちゃったよ!」
「なにしてんだよ」
「だって、私、透明人間になったと…」
「透明人間…?」
石倉くんが私と話していると、周りの人が石倉くんだけを見てひそひそ言っている。
なにを言っているのかわからなかったが、一つだけ聞き取れた。
「あの人、一人でしゃべってるよ」
やっぱり私はほかの人からは見えてないんだ。
「…本当なのか」
石倉くんが驚いていた。