真夏の白昼夢
え、悪口でも言われるのかな。
それなら聞きたくない。
「和歌子がなに」
瑠美は嫌そうな顔をする。
「…和歌子の話、したくない」
そこまで嫌われてるのか、私。
知らなかった。透明人間になってわかりたくないことをわかってしまった。
「なんでよ。和歌子、花火がしたいって言ってたじゃんか。花火買わない?」
莉奈…優しい。覚えててくれたんだ。
「…いいけどさー」
瑠美はそう言って、莉奈とともにコンビニへと入って行った。
どんな花火を買うのかは楽しみにしておきたかったから私はその場を去った。
というよりは悪口を言われていない間に去りたかった。
知らない間に。
私は歩きから走りに変わっていた。
「はぁ…っ、はぁ…」
いつまででも走っていられる。
そんな気がした。
ばたんとコンクリートの上に倒れたときには、
時刻は夕方になっていた。