ストロベリーフィールド
七月に入ったある日、私は翔と二人で誰もいない教室にいた。

先生に呼び出された和希が教室を出て三十分。

ベランダから、雲一つない空を見上げ、翔は突然言った。

「俺さ、実はゲイなんだ」

何の前ぶれもなく、私を見る事もなく、本当に突然だった。


私の頭の中では、今までにないくらいの勢いで思考回路が働いた。
だけど、どんな言葉が最良なのかもわからず、口をついてでたのは

「そうなんだ」

の一言だった。


そんな事で翔を嫌いになったり、軽蔑したりなんてしない。
翔は"翔"だから。
ただ、あまりに突然過ぎて驚いてしまった。

だけど、和希が言ってたのはこの事だったんだと、妙に納得していた。


私は今でも、翔にかける言葉が、本当にこれでよかったのかわからない。
だけど、翔の笑顔が嬉しかった。
よかったんだと、思わせてくれた。


そして私は、翔が打ち明けてくれた事が嬉しかった。
信頼してくれていると思えたから。



「何、お前ら二人でニヤけてんだよ」

教室の入口で和希は言った。

「別にー」

私は嬉しさを隠し切れず、笑顔を振りまいていた。



きっと、この日から私たちは本当の友達になれたんだと思う。

そう思っていたのは、私だけだったのかな…。
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