ストロベリーフィールド

せっかくの啓太と二人の時間に、私は翔に言われた言葉の意味ばかり考えていた。

元々口数の少ない啓太との食事の場で、私すら口を開かず、部屋は静まり返っていた。


「ねぇ、去年の約束覚えてる?」

不意に合った視線に、慌てる自分を隠すように落ち着いた声で言った。

「約束?」

啓太は視線を落とし、しばらく考えていた。

「あぁ、花火大会の事?」

顔を上げた啓太は、満面の笑みを浮かべた。

「うん!一緒に行けるよね?」

啓太は笑顔で頷いた。



一年前、夜空に輝く花火を見上げ、来年も一緒に見ようと約束した。

その時は、また同じ場所に二人で立てると信じて疑わなかった。


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