ストロベリーフィールド
第2章:恋
窓からさす光の眩しさに目を覚ますと、隣で啓太が眠っていた。

いつでも私より後に眠り、目を覚ます頃には朝食を作っている啓太の寝顔を見るのは、随分久しぶりだった。

啓太の頬にそっと触れ、唇を重ねた。

「彩…」

寝ぼけた顔で、うわ言のように啓太は呟いた。

「おはよう」

「おはよう」

なんでもない言葉に喜びを感じた。




「彩、買い物付き合ってくれる?」

朝食を済ませると、ソファーに腰掛けた啓太は言った。

「うん!」

ずっと、学校を休む口実を考えていた私が、断るはずもなかった。

今日は、翔には会いたくなかった。




時計の針が九時を回った頃、ベッドの横でケータイが鳴り響いた。

啓太に寄り掛かって座っていた私が、ケータイを取りに行かないでいると
啓太は私の体を起こした。

仕方なく立ち上がった私がゆっくりと歩き出しても、ケータイはなり続けている。

「だーれー?」

相手も確認せずに電話を取ると、ベッドに倒れこんだ。

「おーれー」

電話の向こうの和希が、私のマネをして元気のない声を出した。

「ケータイ鳴らしすぎー。出なかったら切れよー」

「あ?用があるからかけてんだろ!」

いつもの調子で言う和希が、なんだか嬉しかった。

「なんで休んでんのかって言うんでしょ。今日は啓太が休みだから一緒にいるの。わかったら邪魔しないでよねっ」

「わかったよ。じゃーな」

和希ならいつもの調子で返してくれると思っていたのに、あっさり電話を切られ拍子抜けしてしまった。

よっぽど勘に触る事でも言ってしまったのだろうか…。

昨日、今日と続けて二人の友達に機嫌を損ねられ、なんだか面倒臭くなった。


ケータイをマナーモードにして啓太の元に戻ると

「なんだか楽しそうだったね」

と、呑気に笑う啓太に思わずため息が漏れた。
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