ストロベリーフィールド
昼過ぎになって、私たちはようやく外へ出た。

啓太は雲一つない、晴れ渡った空に両手を広げ、深く息を吸った。

「あー、気持ちいい」

キラキラと瞳を輝かせ、少年のような笑顔で啓太は笑った。



車に乗り、しばらくすると小さなジュエリーショップの前で車が止まった。

「…買い物ってここ?」

私の問いに笑顔で頷くと、啓太は店へ入った。

そして、店員と言葉を交わすと小さな紙袋を受け取り、店を出た。

啓太はそのまま車に乗ると、家へと戻った。


「何買ったの?」

テーブルに置かれた紙袋に目をやり、聞いてみたものの
啓太は袋の中身を教えてくれなかった。



その夜、ソファーでウトウトしていると啓太がベランダから私を呼んだ。

「彩が初めて家に来た日のこと、覚えてる?」

「うん。覚えてるよ」



付き合い始めて三ヵ月が過ぎた頃、初めて来た啓太の家で緊張していた。
その時も、今と同じ様に二人でベランダに立っていた。


「あの日、彩が言ってたよね」

――和希が彼女にペアリング貰ったんだって。

――ペアリングか…。 彼女がプレゼントするくらいだから、よほど愛されてるんだね。

――うん。 私も欲しいな…。


「随分遅くなったけど、プレゼント」

そう言って、啓太はジュエリーショップの紙袋から指環のケースを出し、開けて見せた。

「ペアリング…」

二つ並ぶ指環に、涙が溢れた。

あんな些細な言葉を覚えていてくれたことが嬉しかった。

啓太は私の右手をそっと取り、薬指に指環を付けた。

「ありがとう」

涙が止まらず、ただありがとうとしか言えずにいる私を啓太は抱き占めた。

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