ストロベリーフィールド
何年も前、当時の彼と海で別れた。

和希に恋している女の子と、和希と三人で海へ行くと
彼は綺麗な女性と親しげに歩いていた。

そして、唇を重ねた。
彼と別の女性とのキスを目の当たりにして、私はただ立ち尽くしていた。

和希は私の代わりに彼に歩み寄り、問詰めた。

すると彼は、言った。

――もう、うんざりなんだよ! お前らに振り回されるのは! いつだって彩はお前と笑ってる。 それを平気で見てられるほど、俺は大人じゃねーんだよ!

――そんな事、付き合う前からわかってただろ。 今さら何言ってんだよ。

和希はそう言い残し、私の手を取り歩き出した。



それ以来、海へは行かなくなった。

あの日の光景が思い出されて、胸が痛むから。



「わかったよ。 行けばいいんでしょっ」

私が言うと、和希は頭にポンと手を置き微笑んだ。


「そういえば、葉月が花火大会一緒に行かねーかって言ってたな」

和希の言葉に、鼓動が早まった。

「ごめん。 他の人と約束してて…」

啓太の名前を出す事にためらいがあった。

「じゃあ仕方ねーな」

そう言って和希はケータイを取り出し、葉月にメールした。

「翔はどうするの?」

「俺は興味ねーから」

翔は素っ気なく答えた。

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