ストロベリーフィールド
――私の想いは翔には届かない―

わかっていたはずなのに
納得したはずなのに
現実を突き付けられる度に、胸を締付けられる。


そばにいられるだけでよかったのに
毎日少しづつ欲張りになっていく。

澄んだ瞳で見つめられたい。
細くて長い指に触れたい。
可愛い笑顔を見ていたい。


翔を独占したい…。



「俺はあのワンピース、好きだけどな。すげぇ似合ってた」

うつむく私に、和希は気を逸らすようにクローゼットにある白いワンピースを指差した。

「これ、一度しか着た事ないんだよね」

ワンピースを手にとると、これを着た日の事を思い出した。


まだ啓太と付き合っていた頃、二人で迎える初めてのクリスマスに着るために、何か月も前に買った。

それを見ながらプレゼントは何にしようかと悩み、幸せな一日を夢見た。



そういえばあの日、和希には会わなかった。

朝、迎えに来てくれた啓太と家を出て、帰ったのも随分遅かった。

あの日のために買ったものだったから、それ以来ワンピースは着てないのに…。


「和希の前で着た事あった?」

「見掛けたんだ、あの日。車に乗り込むとこ」

< 49 / 80 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop