ストロベリーフィールド
「ごめんなさい、今日は休…」

エプロンで手を拭きながら出てきた若い女性は、翔の顔を見ると言葉を詰まらせた。

「久しぶり」

彼女の驚いた様子を楽しむように翔は微笑んだ。

「翔ちゃん!もぉ!ビックリしちゃった!元気だった?」

彼女は翔の肩にそっと触れた。

その行動に、二人は特別な関係なのだろうと感じられ、私は二人から少し離れた。

「みっちゃん、おばちゃんは?」

翔は店内を見渡しながら言った。

すると彼女の表情が一変した。

「翔ちゃんが来なくなってから、一年くらいした頃かな。お母さん、入院して。それからすぐに…」

彼女は伏し目がちに、言葉を詰まらせた。

「じゃあ、もう三年になるのか…」

翔の表情も暗いものになり、黙り込んだ。

「でもね、去年やっとお店を再開出来たの」

彼女は沈黙を破るように明るく言った。

そして私たちを、高台を見渡せるガラス張りの壁の席へと案内した。

いつしか雪は止み、雲の隙間から陽の光が漏れていた。

「昔、学校の帰りによく来てたんだ」

傍らに脱いだコートを置いていると、翔がいった。

店内を見渡し、翔がここに通いたくなる気持ちがわかった気がした。
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