ストロベリーフィールド
しばらくして、彼女はコーヒーカップを二つ持って現れた。

「どうぞ」

彼女はカップを置きながら、優しく微笑んだ。

「ごめんなさいね、挨拶もしないで話し込んだりしちゃって。私は高橋実可子。翔ちゃんとは…幼馴染みってとこかな」

彼女は首をかしげておどけて見せた。

「神崎彩です」

私は立ち上がり、頭を下げた。

「悪いな、休みなのに。これまで出してもらって」

翔はカップに触れた。

「気にしないで。それより、翔ちゃんがいつも頼んでたからミルクティーにしちゃったけど、彩ちゃんもこれでよかった?」

はい、と私が頷くと彼女は微笑んだ。

「よかった。それじゃ、ごゆっくり」

彼女が店の奥へと消えていくと、翔はゆっくりとミルクティーを飲んだ。
すると、翔の表情がパッと明るくなった。

「懐かしい」

「翔がミルクティーが好きなんて、意外」

「俺もガキだったからな」
翔の表情がいつになく、優しかった。

「でも、どうしてここに私を連れてきたの?」

ミルクティーを一口飲むと、聞いた。

「なんとなく。久しぶりに来たくなったんだ、彩と」

翔の言葉に喜びを感じる反面、喜ばそうとしてわざと言ったようにも聞こえた。
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