ストロベリーフィールド
「俺さ、友だちとかいなくて、いつもひとりだったんだ。けど、みっちゃんはいつもあの調子で笑ってて、不思議と何でも話せたんだよな」

その頃を懐かしむように、翔は外へと視線をやり、ミルクティーに口をつけた。

「今は和希と彩だな」

私を見て微笑む翔に、同じように笑みを浮かべながら、心の中では、嘘付きと呟いた。

「実可子さんって、素敵な人だね」

身を乗り出して、からかうように言った。

「まぁな。みっちゃん目当てに来てた奴もいたし」

「あんなに綺麗で、優しそうな人だもんね」

そう言ったきり、私も翔も黙っていた。

店の雰囲気のせいか、沈黙は苦にならず、窓からの景色を眺めながらミルクティーを飲んだ。



ゆっくりと時間が流れ、ティーカップが空になっても、私たちは窓辺に座っていた。


「そう言えば、こないだ葉月に会ったんだ」

翔は小さな声で言った。

「元気だった?」

葉月とは随分長い間、会っていないように思えた。

「少し痩せたみたいだけど、元気そうだった。 相変わらず和希の話ばっかりしてたよ、別れたってのに」

翔の言葉に、胸が締め付けられた。

「どうして別れたのかとか…聞いた?」

翔は少し躊躇っていた。
けれどすぐに頭を振り、そろそろ行こう、と席を立った。

< 55 / 80 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop