狼くんと放課後LOVE(仮)


“誰にも莉子を渡さない”


その言葉は同時に莉子から逃げないという意味だった。


これから先、なにが起きても莉子から離れない。


この数週間。

莉子と離れている時間は俺にとっては耐え難い苦痛な日々でしかなかった。


強がってカッコつけても、今の俺にはもう、莉子がいない日々なんて考えられない。



「絶対に渡さない」




お前がどんなに莉子を好きでも、莉子は誰にも渡さない。



「…ふっ…。分かったよ」



酒井が口元に笑みを浮かべながらポツリと言った。


「酒井…」


「分かった。彼女のことは諦めるよ。
それに、元々…最初っから俺に勝ち目なんかなかったしな」


そう言って、辛そうに唇をギュッと噛み締めた酒井の顔は俺の心を痛めた。


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