マスク・ドール
『人形』は動きもしなければ、反応もしない。

「何の為に女性を狙って、顔を剥ぎ取っているの? しかもその魂、どこにやってんのよ?」

しばらく待ってみたが、『人形』は何も動かない。

ヒミカはため息をついた。

このまま壊すのは少々手こずるが、ムリではない。

しかしそれでは被害者達の魂の行方が分からなくなる。

せめて製作者が近くにいればと周囲を探るが、他の気配はない。

『…カオ』

だが突如、『人形』が言葉を発した。

しかし口元は動いていない上に、言葉は奇怪な音みたいだ。

『ウツクシク…サイ、アルモノノカオガ、ホシイ』

静かに体から殺意が湧き上がる。

「お褒めいただき、嬉しいわ。だけど生憎アタシは売却済みなのよね。あのストーカー男に」

ヒミカも薙刀を構えなおす。

「アイツが自分の身も心も魂もくれるって言うなら、アタシだってくれてやる。だから誰にも譲る気はないの。悪いわね」
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