マスク・ドール
そう言ってマノンは顔を上げた。

浮かぶ月は、血のように赤い。

「にしても、あんまり無茶しないようにね? 姉さん」

マノンはニッコリ微笑み、マカの血に濡れた頬に触れた。

「姉さんを倒すのはボクの役目なんだ。あんなガラクタに傷一つでも付けるのは、許さないよ?」

「それは魔女に言ってくれ。私だって、好き好んでケガしたワケじゃない」

「しかも顔を傷つけるなんて、絶対に許さないから」

そう言ってマノンは舌を伸ばし、マカの顔をべろっと舐めた。

「んなっ!?」

「大切な顔なんだから、大事にしなよ?」

「お前に言われると、鳥肌が立つわ!」

「アハハ。…さて、それじゃあそろそろ行くよ」

マノンは自分の背後の影を動かし、姿を隠した。

「マノンッ!」

「じゃあね、姉さん。ケガはちゃんと治しなよ?」

そのままマノンは影に隠れ、消えてしまった。
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