天使と野獣
そして奥の部屋から、
頭にタオルを巻いたさくらが顔を出した。



「京ちゃん、こういうところでは上品にしないとだめよ。
もうすぐ終わるから待っていて。」



そのさくらの口調は、

まさに子供をあやす大人と言うところだ。


もちろん当の京介はそんな事は感じていない。



「ダメだ。さくらさんはきれいだからこんな所に来る必要はない。
帰ろう。」



そう言いながら京介は、

小さい子供のように
さくらの手を引いて外へ出ようとしている。



「京ちゃん、いい加減にしなさい。
私はこんな格好をしているのよ。

これでは恥ずかしくて外にも出られないでしょ。
私が恥をかいても構わないと言うわけ。」



確かにさくらは白いバスローブを着ているだけだ。



「わかった。向こうの本屋にいるから終わったら連絡してくれ。」



気を取り直した京介は、
分別のある少年に戻って店を出た。





「京ちゃん、さっきはどうしたの。
京ちゃんらしくなかったわよ。」



しばらくして、身支度を整えたさくらが

京介のいる本屋に顔を出した。




「あそこにいた女たちが宇宙人に見えた。
俺、女は嫌いだ。」


「何言っているのよ。
店の子たちには愛想良く、
上手く付き合っているじゃあない。」



と、さくらは銀座のクラブでホステスをしている女達と

仲良く話す京介の姿を思い出させている。


ホステスは良くてエステサロンの女性スタッフはダメとは言わせない,と言うところだ。


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