天使と野獣

「あそこにいる皆はさくらさんの身内みたいなものだから、
俺にとっても似たようなものだ。」



京介は自分なりの持論を披露した。

そして隣にいるさくらを満足そうな顔で見ている。


実のところ、さくらは時々京介との関係に不安を感じる。

いくら年齢差があっても、
世間からどんな悪評を浴びせられようとも、

京介が望むなら、
もう数年待って妻になっても良い、
という気持が芽生えるようになっている。


しかし京介の本心は… 

こうして一週間に一度、いや頻繁に会いに来る京介。


時々はベッドに行くこともあるから、

決して弟で満足はしていない事は分っている。


まだ高校生と言う事もあるだろうが… 

最近では自分を父親の東条栄に会わせ、

何かの折には家にも誘った。


しかし、どう考えても将来的なビジョンが見えない。


京介は、さくらさんは俺の大好きな人だ、とか、

俺の永遠の恋人だ、とか、一生守る、などと

人前でも平気な様子で口にする。


この間などは父親に向かい、

父さん、さくらさんに手を出すなよ、
と真面目な顔をして言っていた。


52歳の現役外科医の東条栄… 

京介よりつりあうかも知れないが… 


言葉だけではなく
確かに心細い思いの時は

影のように自分を支えてくれている。

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