天使と野獣
「嫌なタイプだ。」
「そうね。でもお客様だからそうむげにも出来ないでしょ。」
「あいつ、さくらさんを狙っているのかも知れない。
あの目つきが気に食わない。」
京介はさくらを舐めるように見た倉本の顔を思い出した。
一癖ありそうな奴だった。
さくらさんを自分の女にしようと企んでいるのかも知れない。
サクラの男で、用心棒の京介はそう感じていた。
「京ちゃん、これから(もんじゃ)を食べに行かない。
私、チーズの入ったのが好きなの。
それから着替えて店に行くから。」
二人は賑やかな銀座通りを離れて
細い路地のようになっている裏町へ来た。
そういう所にうまい(もんじゃ)の店があるのだ。
「きゃあ。」
いきなり数人の男が飛び出してきて、さくらを羽交い絞めにした。
「何だ、お前達は。」
まさかまだ陽の高いこんな時に、
暴漢が出るとは思ってもみなかった京介、
慌ててさくらを捕まえている男に襲いかかろうとした。
しかし、さくらの前に二人の男が立ちはだかり、
京介の後ろにも二人の男が…
さくらを捕まえている男と合わせば5人の男がいる。
そして男たちはナイフを取り出している。
日本のような法治国家で、
それも警視庁のお膝元の銀座で、
こんな非常識な光景に出くわすとは…