天使と野獣

「やめて、京ちゃん、逃げるのよ。
この人達は危険よ。
私は大丈夫だから。」


さくらは必死に身をくねらせながら京介に声をかけている。


京介が強いのは分っているが、

この男たちはみんなナイフを握っている。


刺されたら… そんな不安が胸をよぎり、

さくらはこの場所に京介を誘った事を後悔している。


通行人で賑わう大通りを歩いていればこんな事には… 

誰の差し金かも分っている。
さっきのあの倉本だ。


いくら誘われてもいつもやんわりと断わっているさくらが、

京介と一緒にいるのを見て、

たとえ学生服を来た子供っぽい京介でも、

あの男の目には一人前の男に見えたのだろう。


それで、脅して手を引かせようとしているのだ。


私と京介の間には特別な絆があると言うのに… 

とにかく京介に何かがあっては大変だ。

お父さんも私を許してくれない。


今までも何度となく京介に助けられて来たが、

その時のさくらは何故か胸騒ぎを覚えていた。


しかし、逃げろ、と言われて逃げるような京介ではない。


自分の大切な女がひどい目に遭うかも知れないと言うのに
逃げられるわけは無い。


第一、さくらさんにこんな事をする奴らを
許すわけにはいかないではないか。


相手がどんな男であろうと、
どんな武器を持っていようと負けることは想定外だ。


が、三人は難なく倒したが京介が、四人目と向き合った時だった。
< 26 / 171 >

この作品をシェア

pagetop