天使と野獣
さくらを羽交い絞めにしていた男が、
いきなりさくらの胸元に手を入れて愛撫し始めた。
さくらは顔をゆがめて耐えていたが… その内に、
男が乳首をつねったのか、
さくらが小さな悲鳴に似た声を出した。
その声に京介が動揺した。
男を睨んでいた京介が,一瞬その眼差しをさくらに向けた。
その油断を突き、男のナイフが京介の右わき腹へ。
男たちもそれなりに喧嘩慣れしている連中だった。
「ウッ… やったな。」
「京ちゃん… 」
しかし、普通ならそれで怯むところだろうが、
京介は普通では無い。
腹から滲み出る血を見ながら、痛みを感じないのか、
京介はその男のナイフを奪い取り、
他の男たち同様に意識がなくなるまで打ち据えた.
そして最後の一人を睨みつけている。
腹からは血が滴り落ちているが、
全く気にならないような顔をして、
ただ,さくらを抱えている男を睨んでいる。
男はその様子に恐怖を感じたのか、
さくらを突き飛ばして逃げようとした。
が、さくらの体を少しでもいたぶった奴を、
逃がすような京介ではない。
素早く動いて男の行く手をふさぎ、
ナイフなど目に入らないとばかりに阿修羅のごとく暴れた。
そして男は完全に意識を失い、
他の男たち同様、白目をむいて地べたに倒れている。