天使と野獣
「京ちゃん、また学校を抜け出して来たのね。
毎日そんな事をして先生に叱られないの。」
「大丈夫。授業数が足りないと言われるけど、追試を受ければよいだけだから楽勝さ。」
「ふーん。」
学校を出た京介は、千代田区にあるモダンなマンションの一室に来ている。
部屋は2LDKだが、リビングに置かれた家具はどれもルネサンス調の高級家具が揃えられ、優雅な雰囲気をかもし出している。
部屋の住人は篠原さくら、28歳。
若いが銀座にある【さくら】と言うクラブのオーナー・ママだ。
三年前まで渋谷のスナックでホステスをしていた。
その時に資産家の男に見初められ、
結婚したのだが翌日に男は死んでしまった。
会社に行く途中の交通事故に遭遇して運転手共に即死だった。
生前、銀座に店を出す計画をしていたと言うことで、
さくらは夫の遺産の中から店の開店資金だけを手に入れて籍を離れた。
学歴は無いが、美人で頭の回転の良いさくらは、
二年でこのマンションを買い取っていた。
別に男の影はない、と言う事はそのクラブ経営手段は並ではない。
そして、京介は別にさくらの弟でも従兄弟でもない。
ただの男と女の関係だ。
高校生がとんでもない、と思うが…
実はこの二人の出会いは五年前。
京介が中学二年になった時だった。
その頃、京介は父の栄と大田区に住んでいた。
父は毎日文京区の日暮里まで通っていたから、早くても帰って来るのは七時だった。
父はどんなに忙しくても京介のために食事の世話をしてくれていた。
その愛に応える為に、京介も七時までには家に戻っていた。
しかし家にいても寂しかったからか、
毎日学校を今の調子でサボって、町をさ迷っていた。