天使と野獣

そして、予定していた一週間は夢のように過ぎて行った。



「父さんは明日から仕事だね。」


「ああ、温泉を堪能して来たから、

新しいエネルギーが出番を待っていると言う感じだ。
あそこもいい湯だった。

お前はあと何日休みだ。」




最近は宅急便が普及している。

スキー道具や荷物、土産品も
一日遅れになるがきちんと配達してくれる。


それで今、羽田空港に着いた栄と京介は、
身軽な雰囲気で品川行きの電車を待っている。



「八日が始業式だから… 
俺は月曜日から行く。

その次の週が試験だ。近くだからちょうどいいや。」


「それがセンター試験と言う事だな。」


「ああ、二日間。」


「お前、宿で勉強出来たか。

教材を持って来たのは知っているが、
スキーをし過ぎて疲れたのではないか。」


「そんな事は無い。
読むべき箇所は全て読んでマスターした。
問題集もやった。」



確かに普通の学生のように
机にかじり付いて勉強、というものではなかったが、

夕食が済んだ後の時間は
何となく持って来た本や問題集を見ていた。


京介にしては、
まあ、珍しい光景だった。


その間、栄はまた風呂へ行ったり、
館内で繰り広げられていたショーを見たり、
顔見知りになった観光客と話し込んでいた。

< 36 / 171 >

この作品をシェア

pagetop