天使と野獣
吉岡と同じクラスに不審者発見。
スポーツマンの吉岡を突き落とす、と言う事を考えれば、
いささか不釣合いのような二人だったが、
火事場の馬鹿力、と言う言葉がある。
見かけはともかく、必死になれば不可能ではない。
二人なら京介の推理に当てはまる。
高校二年生… いくら勉強をしていても、
陰でそんな事をするようではまともな奴にはなれない。
あんなものを口にしているから精彩がない。
そんな事を考えながら、京介は自分の席に着いている。
そう、自分の教室に戻り、
自分が得た情報と, 目撃した事を総合的に考えている。
クラスメートたちの興味深そうな視線など全く気づくことなく、
名探偵になったつもりで推理の世界を楽しんでいる。
そしてその日、珍しく、
いや、高校生活の中で初めてではないのか、
と思われる行動を京介はしている。
要するに六時間目が終わり、掃除が始まっても、
京介は教室に残っていた。
もちろん、一番驚いているのは…
同じ空間にいるクラスメートたちだ。
そう、こんな時間に東条京介がいるとは…
少なくとも、三年生になって以来,、初めてのことだ。