天使と野獣
この男… 確かにあの三人の中の一人、
桜本を殴った奴だ。
馬子にも衣装ではないが、
こんな店員の衣装を着れば、
誰もさっきのチンピラとは思わない。
と言うことは他の二人もどこかで…
客ばかりに気を取られていた京介は、
改めて店内を動き回っている店員を見直した。
いた… 離れた所で客からの注文を聞いている店員、
あいつも見覚えがある。
もう一人、あの大男はどこだ… いない。
厨房か。
いくら気配には敏感な京介でも透視能力は無い。
仕方がない… ここで粘って…
ここで働いているのなら出入り口は他にあるはず、
そこを見張った方が良い。
と言うことを決めた京介が、ラーメンを食べ終え、
しばらくしてから勘定を払おうと席を立った時だった。
「ふざけるな。」
と、言う怒鳴り声と共に、
厨房から料理器具の落ちる音や
倒れる騒音が響き…
あの大男が激高した顔をして堂々と店へ出て来た。
遅れて来た上に何か失敗をして、
先輩に叱られたのだろう。
それに腹を立て…
料理人のエプロンなどを、
乱暴に客にぶつけるように投げ出し、
行くぞ、と二人に声をかけ、
荒々しい足取りで出て行ってしまった。
勿論声をかけられた二人も、
急いで店員からチンピラに戻って後を追っている。
しめた… と、京介も急いで勘定を払い、
再び後をつけ始めた。