天使と野獣
「東条君、本当か。」
京介は木頭たちを前にして
昨日、今日にかけて分った事と
自分の目で見た事を全て話している。
自分で形をつけても良かったが、
何となく面倒な気がしていた。
それに、違法ドラッグがらみなら警察の仕事だ、と思っていた。
その頃には京介の話を、
木頭たちだけではなく
佐伯班の刑事たちは身を乗り出して聞いている。
「この話には俺の推理は入っていない。
全て本当のことだ。
木頭さん、桜本たちの死亡解剖をしたのか。
死因は何だった。
あいつら怯えながら買っていた。
これは推測だが、
もしあいつらがチーズを買い渋っていたとしたら、
殺されたのかも知れない。
口封じだ。可能性はあるだろ。
俺も今気が付いたから… 」
そう言いながら悔しそうな顔をしているのを見れば、
その辺にいる刑事たちより余程刑事らしい。
そこへ一人の警察官が神妙な顔をして入って来た。
「あの、今110番通報がありまして、
暁高校の大下と名乗ったらしいですが、
殺される、助けてくれ、と言って切れてしまった、との事です。
暁高校と言えばこちらの事件に関っているかと思いまして。」
警察官は報告だけして出て行った。
「大下… まさか、あいつら。」
京介はいきなり胸騒ぎを覚えて飛び出した。
「待て、東条君、何があるのか教えてくれ。
我々も急行する。車で行こう。
中で話を聞かせてくれ。」
佐伯がいち早く反応し、京介と並行して動いた。
この少年の言葉は全て筋が通っている。
自分たちの晩生は後で反省する事にして、
今はまずその大下と言う高校生に何があったのか。
手掛かりはこの少年、東条京介だけだ。