千恵の森
そのほうがみんなのためにもなって、デロレスは立派で賢い美人になって、ここにはこんな生きている価値もないような出来損ないのかすは存在しなかったんだ。こんな惨めな感情も。

そこで彼ははっと我に帰った。「お前はなにしにここへ着たんだ?」チコは驚くほど小さな声で自分を叱った。「生まれ変わりに着たんだろ。なのに、お前はまだ、愚図で臆病な弱虫のままじゃないか。チコ、強くなれ」力強く放ったつもりだった言葉が、情けないほど弱々しく、完璧なこを描いている森と灰色の壁に囲まれた殺風景な裏庭に漂って溶け込んだ。
デロレス、この弱虫の屑を許してくれ、お願いだから。

いやもう遅すぎる。もう穴を掘り始めてしまったのだから。もう取り返しはつかないのだから。
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