千恵の森
何を考えていたのか、彼はドアノブに近い左脇では無く、それとは反対側の右脇に人形を寝かせたのだった。
そして、彼はもう一度、爪のあかほどしか無い勇気をかき集めて、今度は全く逆のことをやろうとしている。
チコはポケットから穴を掘っている時に 見つけた石を取り出して握りしめた。全体適に細かい粒が集まったなめらかな石だが、二カ所ほど鋭く角張ったつぶが飛び出している。その鋭く尖った部分が手のひらの皮にくい込み、そのうちに、突き破り血がじわりと滲んだ。
「お前みたいな意気地なしは、もっとつらい目に遭えばいいんだ!」そう叫ぶとその勢いで、人形をさっと抱き上げ、部屋の反対側の扉に向かって狂った様に走り出した。半開きにしておいた扉を 肩と肘を使って後ろへ跳ね開けた。そのまま、 自分の住まっている部屋をかけぬけて、裏口の扉に、まるでドアノブの回しかたを忘れてしまったかのように、何度も体当たりして、やっとのことでドアノブの存在を思い出してそれを回した。
そう、彼はとんでもなく焦っていた。何故か、この作業は、日が暮れる前にすませてしまわなければならない気がした。
全く、俺はとんだ迷信かだな。
そして、彼はもう一度、爪のあかほどしか無い勇気をかき集めて、今度は全く逆のことをやろうとしている。
チコはポケットから穴を掘っている時に 見つけた石を取り出して握りしめた。全体適に細かい粒が集まったなめらかな石だが、二カ所ほど鋭く角張ったつぶが飛び出している。その鋭く尖った部分が手のひらの皮にくい込み、そのうちに、突き破り血がじわりと滲んだ。
「お前みたいな意気地なしは、もっとつらい目に遭えばいいんだ!」そう叫ぶとその勢いで、人形をさっと抱き上げ、部屋の反対側の扉に向かって狂った様に走り出した。半開きにしておいた扉を 肩と肘を使って後ろへ跳ね開けた。そのまま、 自分の住まっている部屋をかけぬけて、裏口の扉に、まるでドアノブの回しかたを忘れてしまったかのように、何度も体当たりして、やっとのことでドアノブの存在を思い出してそれを回した。
そう、彼はとんでもなく焦っていた。何故か、この作業は、日が暮れる前にすませてしまわなければならない気がした。
全く、俺はとんだ迷信かだな。