千恵の森
チコは裏庭で穴を埋めながら、だらだらと汗を流し、がたがたと震える足で、何とか体を支えていた。何度か、足の力が抜けて、土の上に尻を付いてしまったが、どうにか体制を建て直し、一心不乱に手を動かしてそこに踏みとどまっていた。埋めていた所が、周りの土と同じぐらいの高さになると、さっと立ち上がり、死にものぐるいで、家の中へかけこんで、あのもの悲しい旋律を聞くまいと、耳を塞いで床にうずくまった。