よ つ の は
俺は、日常的にミュージックプレイヤーは手放さない。

登下校中や外出中はもちろんの事、家の中でも ほとんど音楽を聞いていない時は無いと言っても過言では無い位。
ましてそれがバイクに乗っている時であっても、フルボリュームで聞きながら…。

普段の俺なら、こうしてバイクに乗る時は、常にロックを聞いている。その方が気分がいい。それに、俺のプレイヤーには 9割ロックしか入ってないしね。

でも今夜は違う…。

そんなプレイヤーの中の“1割”を、繰り返し… ただ繰り返し聞きながら…。



辺りは すっかり暗くなった頃に 海に着いた俺は、ただあてもなく砂浜を歩いた。

春先で まだ少し肌寒い海に人っ気は無く、遠くでゆっくりと回ってる燈台の灯かりだけが、時折 静かな波に反射して、キラキラと輝きを魅せる。


俺は そっとイヤフォンを外し、波の音に耳を傾ける…。

ゆっくりだけどリズミカルな波の音に混じって、少し早い 自分の心音が聞こえてくる…。

頭上には、雲ひとつ無い夜空…。 ほんのりと桃色に染まった三日月が、俺の気持ちを見透かすように 浮かんでいた。

目を閉じても、うっすらと分かる月明かり…


―… 月も 悪くないかな…―。
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