疵痕(きずあと)


 そんなことは意に介さず、あくまで自分の優位を唱える熊坂。


 しかたない、映像学科にはしばらく頭が上がらないな。


 俺が声をかけると、イーゼルにかけられた覆いから二人が出てきた。


「無駄だぜ熊坂信夫。おまえの非道っぷりは撮らせてもらった! いい絵面だぜ。マニアに受けそうな脚色もいらないな」


「ああ、これ、あくまで証拠物件だしな。シシシッ」


「ジョー、鏑木!」


「シッ。なんで鏑木が後になるんだ」


 鏑木が一夜漬けで創った今日のシナリオの束で、俺をしばいた。



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