疵痕(きずあと)
基本、コピーだけで美大へ入った。
十年という長年の積み重ねと経験で、こういう作品ならアカデミックな方面の人々に受ける、いや、これなら受かるだろうと思い込んでのことだ。
それがどうだ。入学したとたん、コピー能力さえ、俺を見放した。
確かに池を描けばラッセンのように。鯉を描けばイルカのようになっていたら、それなりに格好はつくだろう。
少なくとも俺はそう思っていた。
たとえればモネの色違い。
裸婦を描けばセザンヌになる。