疵痕(きずあと)
被害者の俺としては不本意な見方だが、その背に確かな哀愁を感じた。
なぜなんだ? 俺が何したっていうんだ。くそっ!
そこへミラクルな偶然が発生した。
「B号館の……イチマルサン、はここ、と……」
後ろの方の扉からひょこっと顔がのぞく。
「あれ、今日使ってないの? 誰もいない」
声がしたはいいけれど、このままでは死体になるまで放っておかれかねない。
こちらは車ほどではないが百キロくらいのおばちゃんが乗ってたママチャリに跳ね飛ばされたくらいのダメージを負って動けないのだから。
「はい! はいっ! いまーす! こっ、ここでーす。った、助けてくださーいっ!」
俺はここ最近、めったにないくらいの音量で、声の限りに助けを求めた。