疵痕(きずあと)


「いや、途中からみんなはしゃいでたし、先生のツテは本物だったし」


 今、俺の右足首はギブスで簡単に固められてる。


 急患扱いで俺はヨボヨボした医者にかかることができた。


 大丈夫かと思っていたが、医師は診察に入ると眼光鋭く、作業にもそつなく素早かった。ベテランが本気を出すと、老いにも勝てる。


 そのことに俺は感動した。


 もともと職人とかの作業を観るのが好きだったからかも知れない。


 彼はプロフェッショナルなのだ。


 相当の敬意を払われるべきだが、俺は常にアウトロー。


 素直に払ったのは医療費だけだ。


 それも、借金して。






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