Love Slave
ガシャーン


私の手から梅ジュースが落ちる。入れ物は瓶だったから、足元でガラス片が散らばり、中身の梅ジュースの炭酸がしゅわしゅわと音を立てて床に広がる。


一瞬の隙をついて、私はあっという間に強盗に捕まってしまった。
太い腕が私の首に巻きつく。強盗が持っていたもう一つのナイフを取り出し、刃の部分を私の頬にピタピタと付ける。


ゾゾーッと鳥肌が立つ。


「これでまた形勢逆転だぞ。この女がどうなってもいいのか」


これって、最大のピンチ?このままこの男に首チョンパされて死ぬの?


(いやいやいや・・・・ちょっと、椚先輩!助けてくださいよ!!)


声にならないし、出てもこない。乙女のピンチだというのに、椚先輩はいつもと同じ冷ややかな目で見ているだけだった。


「金出さねぇと、この女の命はないぞ」


本気で首ちょん切られる!!どんどん顔面蒼白していくのが分かった。


(マジで殺される!!)


私は祈った。絶対に、椚先輩が助けてくれると・・・・。


「・・・168円いただきます」


・・・・・・へ?


いきなり何言い出すんだ、一体・・・・。


「・・・店の商品ダメにしましたからね。その料金です」


アンタはそれしか脳にないんかーい!!どんだけ商人ぶってるわけ!?人が殺されかけてるというのに、アンタにとっては商品>>>>>>>>>>・・・・私ってこと!?


「・・・ふざけやがって!!」


強盗が再び、椚先輩に刃を向けたその時。


つるんっ


「うおっ!?」


零れた梅ジュースを踏み、足を滑らせた。


「きゃあっ」


私も商品棚に飛ばされて転ぶ。
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