Love Slave
たどり着いたのはヨーロッパ風のお店。


看板には『等々力楽器店』と書かれている。


「ここって、もしかして・・・・」


「僕の祖父が経営しているお店です」


カランカラン、と扉が鈴の音を鳴らす。その音に気付いて出てきたのはあご髭を伸ばした、風情のあるお爺さんだった。


「おお、アルではないか」


「こんにちは、おじいさん。頼んでいたものを取りに来ました」


「待っていたぞ。そちらのお嬢さんは・・・・」


「この方は同じ学校で生徒会庶務を担当されている早乙女もとかさんです」


「さ、早乙女です・・・・」


私は緊張しながらぺこりと頭を下げた。


1階はお店で、様々な楽器が売られていた。お祖父さんは楽器職人でもあるという。2階は自宅になっている。上がらせてもらうと、アンティークな家具が所狭しと置かれていた。


大きな棚の中には、たくさんの大会やコンクールのトロフィーや盾、賞状が飾られていた。
そこには、フルートを演奏するアル君の写真も一緒だった。


「これ、全部アル君が取ったものなの?」


「そうですね、はい」


こんなトロフィーの山なんて見たことない。私なんて、資格だって持ってないのに。世界的フルート奏者の名は伊達じゃないんだな。


「おい、アル。出来たぞ」


お祖父さんが持ってきたのは、銀色に光るフルート。
アル君は受け取り、フルートをまじまじと見つめる。


そして、お祖父さんは奥のソファーにどっしりと座る。


「わしが造った中では最高傑作じゃ。どれ、早速その音色を聴かせてはくれんかの」


「そうですね、それでは・・・・」


アル君は軽く目を閉じて、唇にフルートを近付ける。


♪~♪~


これは即興曲ではない。私でも知ってるクラッシック。
ホルストの『木星』だ。
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