Love Slave
不思議と気持ちがミントみたいにすーっとした。魔法がかかったように落ち着く。


すると、先ほどまで頭の中からスポンッと抜けていた記憶がみるみるうちに蘇ってきた。


生まれて初めての演説。こんな大勢の中で、本当にどうなるかと思ってた。私の下手くそな文章を生徒たちは真剣には聞いてくれなかったかもしれないけれども、騒ぎ立てることなどはなかった。


相変わらず心音はバクンバクン波立ってるけど、緊張を通り越して清々しい。


「……以上です」


壇上から一歩下がり、一礼をする。途中混乱した部分もあり、足もガクガクになってまた失神するかと思った。

背中には、会長の手の温もりがまだ残っている。それが後押しされて、緊張の糸が解けたのは確か。
もし会長のフォローがなければスピーチできなかった。


あんなサドな態度をとったくせに、優しいじゃないかと感心した。


「はい、皆さん!! 素敵なスピーチをしてくれた早乙女もとかさんに盛大な拍手を!!」


長髪でメガネの生徒会役員が拍手を求めると、見事な拍手喝采となった。


さすがにこれは照れる。やっと終わって、ここから降りられる。胸を撫で下ろす。


そして、人質に取られていた携帯電話を取り戻せる。


そう思っていた。


「ここで、皆さんに重大なお知らせがあります」


辺りがざわつく。会長だ。マイクを持ち、壇上に上がってくる。


「え?」


私の腕が突然、強力磁石のように会長に引きづり込まれてしまった。抵抗する間もなく、再三会長の身体にピタッと張り付く。


定番のように女子生徒の悲鳴が上がる。


そして、一度咳払いし、全女子生徒が悩殺するような満面の笑みで会長は宣言した。


「本日より生徒会庶務に就任しました、早乙女もとかさんです! よろしく!!」
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