Love Slave
「何・・・・?」


何かもらえると思って、反射的に手を出した時。


「あっれー、誰かと思えば等々力アルターレ君じゃないか」


男性としては甲高い声。振り向くと、茶髪に髪を結わいた少年が立っていた。右手には楽器のケースが。どうやら、彼もフルート奏者らしい。


アル君は私に何かを渡すつもりだったようだが、バッグの中でくしゃっと紙が丸まった音が微かに聞こえた。


「女の子とデートですか。しかもこの方、生徒会の人じゃないですか」


「・・・・・・」


ムカつくような言い方だけど、不思議と爽やかに聞こえる。


(あれ、この人何処かで見たことある・・・・)


うちの制服着てるから、うちの学校の人だろうけど。でも見たのは学校ではない。どこだろう?


「あのー・・・・もしかして、吾妻梓(アズマアヅサ)さんですか?」


通りすがりのOLさんが彼に話しかけてきた。


「はい、そうです。こんばんは!」


「キャー、本物だ!!握手してください」


「そうだ・・・・吾妻梓だ!」


何処で見たかって言ったら、TVだ。今人気急上昇中の若手俳優。確か、彼は14歳だったはず。アル君と同じ、飛び級ってことか?
っていうか、うちの学校に有名人通ってたの!?


今さらながら知った新事実、その2。


握手とサインをし終わった後、彼はアル君を見てニヤリと笑った。


「・・・・来週は待ちに待ったコンサートだな」


へ?コンサート???


「ゲスト出演の依頼は来てたが、まさかアンタもな」


「そうですね、今までにないパターン・・・・ずっとコンクールで鉢合わせていましたからね」


「曲目は決まったか?」


「いえ、まだ・・・・」


「そうか、んじゃ。俺は明日も仕事あるから。お互い頑張ろうぜ」
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