Love Slave
「ったくもー、どんだけコキ使えば気が済むのよ」


掃除、肩もみをやらされ、挙句の果てには「コンビニスイーツを買ってこい」なんてワガママ言いやがった。


嫌だ、と断れば済む問題ではない。私の背中には『奴隷』という烙印が押されているのだ。
何ヶ月経ってもこの呪いは消えない。どうにかして消してほしい。刺青みたいに一生残ってしまいそうで嫌だ。


♪~♪~


(ん、この音は・・・・・)


導かれるように音色の許へ向かう。多目的ホールから聴こえる。
ガラスの隙間から覗く。


やっぱり、アル君だ!


♪~・・・・・


音が止まった。演奏終了ってことか。


「失礼します・・・・」


そっと入ると、アル君は振り向く。ちょっときょとんとした顔をされた。


「・・・・すごいですね、アリスが迷い込んできました」


「へ・・・・・?」


今さらながら気づいた。しまった、今日は不思議の国のアリスの格好させられてたんだった。青と白のドレスに頭には大きなリボン、ゴスロリとは言い難いがかなり恥ずかしい格好だ。


「ご、ごめん!着替えてくるね」


危うく、この格好で買い物に出るところだった。


ぱしっ


「え?」


手を握られた。白くて小さくて冷たい手だった。


「似合ってますよ、もとかさん。よかったら、話し相手になってくれませんか?」


「う、うん・・・・」


部屋の端のパイプ椅子に座る。話し相手と言っても、何話していいのやら。
アル君はフルートをケースにしまおうとしていた。それを見て、思わず言ってしまった。


「ねぇ・・・・吹いてみたいんだけど」
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