Love Slave
アル君の手がピタッと止まる。フルートは3つに分解してケースにしまうらしい。


「いいですよ、どうぞ」


あっさり承諾してくれた。大切にしているフルートを吹くなんて、悪いかなとは思ったけど。
銀色に光るフルートを手に持つ。


「えーっと・・・こうやって持つの?」


「違いますよ、指はここに・・・・・」


悪戦苦闘しつつ、何とかフルートの持ち方を教わる。口につけるからある意味、間接キスになっちゃうのかな?そう言った事でもドキドキする。
息を吸って、音を出してみる。


フーフーフー・・・・・


息を通る音しかしない。風が通り抜けたというか、間が抜けた音。


「全然音が鳴らない~」


「そうですね、初めての方は大抵そうですよ。テクニックと腹筋運動、そして、練習が必要なんです」


そりゃそうだよね。簡単に吹いてるけど、すごく難しいものなんだな。私なんて、吹きたいとか言っといて、リコーダーだってまともに吹けないのに、赤っ恥を掻いてしまった。


腕上げっぱなしは辛いのに、アル君は平然としながら綺麗な音色を奏でている。華奢な体つきしてるのにすごい。こんな女が吹くべきものではないと、すぐに返却した。


「アル君は身体鍛えてるの?」


「はい、毎日腹筋・背筋・腕立て300回しています」


「300回!?」


ということは、相当なムキムキの可能性がある。想像できん。


「ね、もう一度アル君の演奏聴きたいなって・・・・」


「・・・・・・・」


「アル君?」


彼の目が細い線になっている。うとうとと頭が小刻みに上下する。


こてん・・・・・


アル君の頭が、私の肩に乗っかる。


「ちょ、ちょ、ア、アル君!?」


焦る私に対し、彼の頭は肩から外れ下に落ちる。


私の膝の上に。
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