Love Slave
「ありがとうございます、このご恩は必ず返します」


「ご恩なんてそんな・・・・」


顔が紅潮していくのが分かった。やだ、私めっちゃときめいてる!


「それでは、僕、リハーサルに行かなくてはならないので」


パタパタと可愛らしく走りながらホールを出て行く。
ドア側にいた会長には気づかなかった。


不気味に半顔で私の顔を見る。


「ご、ご主人様・・・・」


「よお・・・・。お前、俺の頼み事はもう済んだのか?」


「あ・・・・・っ!」


しまった、忘れてた。買い物頼まれてたんだっけ。


「い、今すぐ買いに行きます!」


しかし、思いっきり通せんぼされた。


「と、通してください!」


「俺の頼み事よりも、膝枕のほうが大事か?」


「それはその・・・・・」


「すっぽかすとは、いい度胸しているな」


にんまり、と悪魔の微笑みを見せた。嫌な予感しかしなかった。
この場から一刻も早く抜けださなければ。後ずさりしながらあたりをきょろきょろ見回すと、パイプ椅子の下のケースを発見した。


「あー!!あれはアル君のフルート。リハーサルがあるのに大変だ、私、届けに行ってきます!!」


「おい、話は終わってないぞ」


棒読み気味な喋りで、アル君への届け物を口実に会長の許を去る。


「これで一安心・・・・・」


「待ちあがれぇぇぇぇぇ!!」


「ぎゃあああああああああっ!?」


会長が後ろから陸上走りで追ってきた。私は阿鼻叫喚しながら必死で逃げる。
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