Love Slave
保健室で爆睡していた椚先輩を叩き起して、治療してもらった。
幸い、命に別条はなかった。


ただ・・・・・。


「・・・全治10日ってところだな」


右手をひねってしまった。包帯を巻かれて、三角布を取りつけられる。


「10日ってことは・・・・・」


「コンクールは棄権するしかないね」


アル君が怪我をしたということで、生徒会メンバー全員が集まった。


「そんな、何とかなりませんか!?」


「撫子ちゃん、気持ちは分かるけど・・・・この手じゃ演奏は出来ない」


アル君は下を向いたまま、何も応えようとしない。演奏が出来ないということを認めているということか。


「アル君、毎日一生懸命練習してたのに、こんなのって・・・・・」


「・・・・もとかさん、もういいんです」


彼が小さく応えた。今日行くはずだったリハーサルも不参加という形になってしまった。
メンバーに対してぺこり、と頭を下げて保健室から出て行く。


私はギリッと歯を食いしばった。


「アル君!!」


私に呼ばれて、彼は振り向く。笑顔ではない、無表情。
何も言わずに、渡り廊下を歩いて行った。


その瞳には、悲しみよりも悔しさを感じられた。


「諦めろ」


「会長!」


「楽器に手は命だ。下手に演奏したら壊れちまう」


「だからって、そんな・・・・」


ばんっ


壁を思いっきり叩いた。ビクッと身震いした。


「さてと、さっきの続きでもしようかの」


「はい・・・・・?」
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