Love Slave
私は話を理解できないままなのだが、アル君は観念したかのようにバッグから何通かの手紙を取り出した。


「・・・・大和さんのお察しの通りです」


会長は封筒の中身を見る。私は横から覗き見る。


『等々力アルターレ コンサートを辞退しろ さもなくば貴様は地に落ちることになる』


新聞の切り抜きのような文章。まさに、刑事ドラマで見る脅迫文。


「会長、これって・・・・・」


ひょいっと私は会長の横顔を見た。


唇が斜め上に上がっている。ビクッとした。


(何ニヤついてんの、この人・・・・)


気色が悪いというより、薄気味悪い。アル君は気付いていないらしい。


「他にも、血の付いた楽譜が送られてきました」


「うわっ、何それっ」


鳥肌が立ってしまう。でも、この会長の笑みも悪寒がする。
そして、とうとう笑い堪えなくなったのか、隣でクククと喉を押し殺して笑い始めた。


「なら、今度は楽譜じゃなくてそいつ本人を血祭りにしてやろうじゃないか」


完璧にサディストの笑い方になる。悪寒が最骨頂になる。


「そ、そいつって?」


すると、会長は懐からテレビのリモコンを取り出し、視聴覚室のテレビに向けて電源を入れた。


映し出されたのは音楽番組。キラキラの衣装を着た司会者が曲紹介する。


[それでは演奏してもらいましょう、吾妻梓さんです!!]


出てきたのは人気急上昇中の若手俳優・吾妻梓。
もう一つの顔は・・・・フルート奏者。アル君のライバル。


「まさか、この手紙の送り主?怪我させたのも・・・・」


「アルが優勝すると、奴は常に2位。コンテストではなく、コンサートで恥を掻かそうというオーソドックスな手口だ」


そんな奴、血祭りでも何でもしてしまえ!!
こればかりはこのドSの意見に賛同する。
< 204 / 281 >

この作品をシェア

pagetop