Love Slave
「やあ、来たね。君は下がってていいよ」


「はい、失礼します」


守衛の人は深くお辞儀をして、生徒会室から出て行った。


その時会長はアフターヌーンティを優雅に飲んでいた。甘い匂いがするので、恐らくフルーツ紅茶だと思う。緊張が半端じゃない。


私は勇気を出して、震える声で訴えた。


「あ、あの! 生徒会庶務任命って一体何なんですか!? そんなの、聞いてないし。会長がそんなこと言ったせいで、あの後大変になったじゃないですか!」


会長の爆弾発言により、体育館内は騒然となった。その結果、本日のメインであった新入生歓迎会は急遽後日に行われることになってしまったほど。


プレゼンする気満々だった先輩たちを敵に回してしまったように感じた。色々な意味で睨まれる始末。


もみくちゃにされて、私のただでさえボサボサの髪なのに、さらにボサボサにされてしまった。おまけに主に女子から罵詈雑言を浴びせられた。


肉体ダメージよりも精神ダメージのほうが大きい。


なのに、会長は何も応えてくれない。それどころか、ティーカップにお茶を注いでおかわりしている。


(誰のせいでこんな目に……)


その態度にカチンッときた。


こっちは大変な目に遭ってるのに、無視かよっ。


だから思わず言ってしまった。


「ちょっと、聞いてるんですか!?」


その瞬間、会長はティーカップを皿に置いた。そして、私のことをギロッと睨みつけてきた。


その迫力満点の眼力に今思わず口に出してしまったことを後悔した。全身総毛立つ。全身に悪寒が迸り、後悔先に立たず。


「誰に物言っている」


静かに立ち上がる。ゆっくりと、私に近付いてくる。


すっかり青ざめてしまった私は入口に駆け寄る。ドアノブを回すが、開かない。鍵が掛けられている。これでは逃げられない。


迫りくる会長。入口にはりつく私。


そして、何かが私に向けて半円を描きながら飛んできた。
< 21 / 281 >

この作品をシェア

pagetop